俺++(Includeore)のDee!です。Komplete 10 Ultimate(以下K10U)レビュー第7回目は、エフェクター(後編)です!数が多いので前編(6回目)と後編に分けてご紹介します。今回はコンプやEQの出音に定評があるSoftubeシグネーチャー系が中心です!
スポンサーリンク
■PREMIUM TUBE SERIES
具体的な機種名がわからないのですが、渋い紫色がワンポイントの色使いになっているあたり、おそらくMANLEY製品の再現系でしょうか?MANLEYってなんぞや?という方も多いと思いますが、高品位な真空管ハードウェアのコンプやEQに定評のあるメーカーです。百聞は一見に如かずということでこちら(http://hookup.co.jp/products/manley/)をどうぞ…w
●カットとブーストが同時に出来る2バンドパライコ Enhanced EQ
見た目にもシンプルで分かりやすい2バンドのパラメトリックEQです。MANLEY ENHANCED PULTEC EQP-1Aかな? 低域と高域の2バンドというだけでなく、帯域もダイヤル式に数段階で区切られているというぐらい割り切っていて、NI製品にしては珍しいぐらいパラメータが少ないのですが、その分、EQが苦手な人にもとっつきやすいでしょうw
面白いのはカットとブーストが同時に出来ること。ならば試しに、と思いっきりブーストしてみましたが、変にギラギラボワボワしたりという嫌味な持ち上がり方はせず、滑らかにサウンドが変化する印象です。
私は位相変化を気にする関係でEQは基本カット方向で使う人間なのですが(不要部分をカットした分フェーダーを上げれば、必要部分をブーストしたのと同じ効果があると思っています)、このEQなら積極的にブースト方向で使いたいな、と思いました。
●M/S処理も可能な左右独立可能な4バンドのパライコ Passive EQ
こちらはEnhanced EQと打って変わって左右4バンドずつの大規模なパラメトリックEQになっています。見た目的におそらくMASSIVE PASSIVE EQですね。Enhanced EQ同様に、かかり具合も嫌味がなく滑らかな感じのサウンドで、さすがはSoftubeといったところです。
Enhanced EQと比べてバンド数が多いだけでなく、選べる帯域やEQのカーブも調整でき、LPFとHPFもあります。ただし各バンド、カットもしくはブーストのみの切り替えなので、Enhanced EQのようにカットとブーストを同時に、といったことはできません。(出来るほうが珍しいのですが…w)
Enhanced EQと組み合わせることで6バンドEQみたいに使うのも面白いかなと思います。例えばEnhanced EQでざっくり作った音を次の段でPassive EQで微調整するとか、或いはその逆でEnhanced EQでの加工前段階の下準備をPassive EQでするとか、色々なアプローチが考えられますね。
普通のパライコはステレオで4バンドですが、こいつは左右独立で調整できるのが面白いですね。デフォルトでは左右がリンク設定になっているので、どちらか片方のつまみを操作すると連動しますが、左右リンクを切ることで独立動作するようになります。例えば、左右でバランスが異なるオーディオ素材の質感調整が出来ちゃうわけです。
あと、このコンプのユニークな点としては、真ん中にあるL/Rスイッチを切り替えるとM/Sモードになり、ミッドとサイドを独立で調整できます。L/R独立処理だけでなくM/S独立処理までできるコンプはあまり存在しないので、これが1つあるとマスタリング用としても重宝しそうですね!
●非常に素直でシンプルなコンプ・リミッター! Vari Comp
こちらはSTEREO VARIABLE-MU LIMITER COMPRESSOR(以下バリミュー)かな? これまたEnhanced EQ並にシンプルで、コンプなのにレシオもニーもない割り切り仕様。ニーの代わりがRecoveryというツマミでしょうか? 自分の中ではコンプってなんだか難しいエフェクターの代表格なんですが、こいつはパラメータも少なくて分かりやすいですね。リミッターモードやサイドチェイン機能もあります。
実はこのコンプ、リミッターモードの方がやや下品なかかり方をしてくれますw 試しにElectroMixPunchというプリセットをかけてみました。このプリセットもリミッターモードで動いていますが、キックの重さがあまり損なわれずスネアがバシっと潰れて、細マッチョなイイ感じになっていますw
個人的な印象ですが、極端な音作り用コンプの場合、低音や高音の成分が減ったり、カサっとした色づけが発生する印象があるのですが、このコンプはピュアな感じといいますか、そういった良くも悪くも音の極端な変化が発生しづらい感じがしました。ステムトラックに挿して、細部の最終的な丁寧な追い込みに使うといった用途も良さそうです。ただ、このコンプ、シンプルな見た目と裏腹に結構CPUには優しくない重さなので、使いどころを選ぶ必要がありますね…
ちなみに本物のバリミューは左右対称に同じツマミが並んでいてMASSIVE PASSIVEみたいに独立操作できるようです。同様に本物のMANLEY版PULTEC EQP-1Aもモノラル版とニコイチになったステレオ版があるようです。プラグインは片方だけですが、ステレオ素材にかけてもモノラルサウンドになったりはしませんのでご安心をw どうしても左右独立で音作りしたい!という場合は、モノラルトラック2つの構成でやる、という手もありますね。
■VINTAGE COMPRESSORS
さてここからは、Softubeによる定番ビンテージコンプシリーズの快進撃が始まります!w ひと目で「ああ、あれだ!」とわかる機種名や、PREMIUM TUBE SERIESでも見せ付けてくれた、きめ細やかで入念のないアナログサウンドの再現を想像するだけでワクワクしてきますね!
●必殺4つボタン同時押し!Urei 1176の再現コンプ VC76
Urei 1176は商業スタジオに行くと高確率でラックにマウントされている超有名な定番のコンプです。このコンプのオリジナルを作ったのは、あのUADシリーズやApolloシリーズなどでも有名なUniversal Audioの創業者のBill Putnam氏です。
現在のDSPエフェクトハードウェア路線は二代目のBill Putnam Jr.氏が作り上げた物ですが、初期のUADプラグインの開発にあたりもっとも力を入れたのは、やはり自社製品であり先代の名作Urei 1176の再現だったとのこと。その後のUADの世界中での評判の高さは言うまでもありませんね。UAの歴史についてはRock oN Companyさんのインタビュー(http://www.miroc.co.jp/magazine/archives/29006)が参考になりますよ!
世の中にはたくさんのコンププラグインがあって何を使えば良いか目移りしますが、もしもKompleteをお持ちでしたら、スタンダードなアナログコンプとして取りあえずVC76という選択はアリだと思います。また、ツマミも少なく、かかり方もとても分かりやすいので、弄っていて楽しいですw
INPUTちょっと上げ気味でRatioを4にしてReleaseを右に回してやれば「あ、そうそうこういうコンプ感が欲しかったんだよね!」みたいな音がすぐに得られます。あと、実機1176というとRatioボタン全部押し!という必殺技があるのですが、VC76でもRatioスライダーをALLに切り替えるとそれができるのがうれしいですねw
実は私、これのWaves版も持っています!w CLAのバンドルに入っているのですよ。ということでVC76とCLA-76の比較音源を作ってみました。ちなみにWavesの方のアナログノイズが勝手に混ざる機能はオフにしてあります。
オリジナル、VC76、CLA-76で並んでいます。ドラムループ部分だけにコンプをかけています。音はわざとマッチョ気味にしてありますw それぞれの1176を通った後はキックのアタック感が明瞭になり、スネアがバシーっと伸びていますね。
パラメータは大体同じぐらいにしてみたのですが、完全に同じにするとVC76の方が若干音量が小さいので、Outputを同じぐらいに聞こえる程度にあげてあります。割と似た傾向の音ですが、CLA-76の方が若干荒々しくてローファイな感じに聞こえますね。
あとCLA-76の方は白いモデルにも切り替えできます。見た目が変わるだけかと思いきや、潰れ方の傾向がちょっと違うとか。VC76は黒モデルしかないのでCLA-76も黒モデルのみで比較しましたが、NI(というかSoftube)にも白モデルを作って欲しいですねw
●光学式コンプの定番!LA-2Aの再現コンプ VC2A
Teletronix LA-2AもUrei 1176と並ぶぐらい超有名な定番のコンプです。このコンプのオリジナルを作ったのは、実はUrei 1176と同じUniversal Audioの創業者のBill Putnam氏なのです。なので取り扱いもUniversal Audio社ですし、勿論UAD版も存在します。1176とLA-2Aを使いたくてUADを買った人も多いのではないでしょうか?(私もUADが欲しいのですが中々手が出せません…w)
これまたUrei 1176以上にシンプルというか、基本はツマミ二つの調整でなんとかせえ、っていうストイックな仕様の機種ですね。PEAK REDUCTIONで潰し具合を決めて、GAINで音量を上げるという方法なので、コンプが苦手な人にとっては1176より分かりやすいかもしれない。こういうシンプルなものは大好きですw
はい、これもWaves CLAのバンドルに入っているので持っています!w ということでこちらも1176同様に比較音源を作ってみました。アナログノイズが勝手に混ざる機能はオフにしてあります。あとCLA-76のHiFREQツマミのデフォルト位置はセンターなのですが、このままだとハイパスフィルターがかかってしまうので左いっぱいに回して切ってあります。
●パンチのある出音が特徴のDBX 160の再現コンプ VC160
DBXというと個人的には「dbxって2万前後の安いけど中々イイ感じのラックマウントタイプのコンプやEQを作ってる会社」という印象があります。DBX 160も前の2機種と同じぐらいスタジオ定番のビンテージコンプとのことですが、正直なところ名前しか知らない… 年に1回たまに会うけど、あまり話したことがない親戚のおじさん、みたいな印象がありますw
というわけであまり変な先入観もなく、NIの公式サイトの売り文句だけ見ながら試しに使ってみました。まずTHRESHOLDを左方向に、COMPRESSIONを右方向に回すと、どんどん音が潰れて小さくなります。そこでOUTPUTをグインっと右に回して音量を引っ張り上げてやると、キックやスネアに独特の押し出されたコンプ感とサチュレーションが生まれて、ドスドス、ジャリジャリした音に変わってきます。
これもWavesのを…と思いきや、残念!持ってない!w なので、Wavesとの比較音源はありませんがこんな音です。
パラメータはこんな感じです。
やりすぎると単に汚い感じがしたのでこの辺りにしてみましたが、なるほど、このドスの効いた感じや歪みの乗り方は、ロックやヒップホップのような荒々しい質感の音作りに向いたコンプというのがよくわかりますw 歪むといっても前編でご紹介したSuper Charger GTみたいな攻撃的過ぎるジャリジャリな感じではなく、もっとアナログ的な感じですね。
Waves版dbx160は割と最近リリースされていましたが、Softube版との音の差が気になりますね。
三機種とも本物の実機はモノラルなのでステレオで使う場合は2台必要なのですが、プラグイン版はVari Comp同様、ステレオ素材にかけてもモノラルサウンドになったりはしませんのでご安心をw ちなみにこれら三機種にもVari Comp同様に実機にはないサイドチェイン機能がついています。
ちなみに本物のdbx 160のレビューはこちら。
http://lgril.blog59.fc2.com/blog-entry-183.html
■REVERB CLASSICS
あの伝説のアルゴリズムリバーブ2種類をSoftubeが再現!オレンジのRC24は80~90年代のリバーブの名機の再現という触れ込みや見た目からLexicon 224、青いRC48はLexicon 480Lだと思われます。攻めまくりのSoftubeシリーズ、こりゃ最後まで気が抜けません!w
●80~90年代の伝説のアルゴリズム・リバーブが復活! RC24
少しざらついたようなローファイさがあり、しかしファットで濃厚。これが噂に名高いレキシコンリバーブなのか!と興奮しましたw 80~90年代といえばリバーブたっぷりのサウンドが流行していましたが、あのテイストが2015年の自宅環境で味わえるというのは何とも有難いといいますか…w
空間はRoom、Small Hall、Large Hallの3種類。左のPredelay、Depth、Intensityでリバーブの「濃さ」を、右のBass、Middle、HiCutとCrossoverで残響成分のEQ調節が出来ます。明るくスッキリさせたいならBass下げ気味、ダークかつマイルドにしたいならHiCut下げ気味といったところでしょうか。
レキシコンのリバーブは「密度が濃い」という評判をよく聞きます。そのせいなのか、RC24とRC48のリバーブの設定具合が、グラフ表示ではなく色の濃さで表示されるところが「あ、リバーブがたっぷりかかってる!」って感じが視覚的にも分かりやすくて好きですw
●スタジオ定番の伝説のアルゴリズム・リバーブが復活! RC48
RC24より広い空間を作れるのでホール向けとのことで、空間セッティングもHallとRandom Hallの2種類だけです。
Random Hallはリバーブの反射にランダム要素が加わって、より複雑な残響が得られるタイプです。
RC48同様、左のPredelay、Sharp、Sizeでリバーブの「濃さ」を、右のBass、Middle、HiCutとCrossoverで残響成分のEQ調節が出来ます。
RC48はアコースティック楽器向け、という触れ込みですが、確かにRC24同様の「密度が濃い」感じは似ていて、なおかつRC24よりもハイファイ寄りな音なので、ピアノやアコギ、ストリングス等にかけても、それほどビンテージな感じにはなりませんね。楽曲や楽器によってRC48とRC24を使い分ける、といった贅沢なことが出来るのはモデリングプラグインならではのメリットですねw
ちなみに本物のLexicon 480Lのレビューはこちら。
http://lgril.blog59.fc2.com/blog-entry-221.html
いやーなんというか、実はコンプやEQなどのエフェクトは慣れているWavesを中心に使っていたせいもあって、Komplete付属のエフェクトはGuitar Rig以外は使っていなかったのですが、正直な話、凄い勿体無いことをしていた!と後悔しました…w
前編のNI製も出音が素晴らしく、そして後編のSoftube製もこれまた音のクオリティが高く、これらを付属エフェクトと呼ぶにはあまりに失礼な話かと思いました。Komplete Effectというバンドル製品で売っていたら見る目が変わる人が多くなるのでは?と思います。これからはWavesと共に好みの音が出るモデルを選り好んで使って行きたいですね。
前編後編で登場したいずれの製品も、FFTや波形表示はないので、別途メーター系プラグインをマスターチャンネルに挿して、それを見ながら音作りや調整作業をすると、ツマミと実際の音の変化の効果の関係がより掴み易いと思いました。
以上、第7回目のレビューでした。8回目からはKontakt拡張ライブラリについてレビューしていきたいと思います。お楽しみに!
スポンサーリンク
Dee!
クラブ系、歌物、ボカロ、同人なんでも。本業はWeb系。
元Rock oN Company/MI所属。
Web : http://includeore.com
Twitter : https://twitter.com/Includeore
Latest posts by Dee! (see all)
- Komplete 10 Ultimateのレビューその7~エフェクター(後編)~ - 2015年12月18日
- Komplete 10 Ultimateのレビューその4~Reaktorパッチ編~ - 2015年9月26日
- Komplete 10 Ultimateのレビューその3~Fm8/Absynth/Reaktor編~ - 2015年9月14日
Speak Your Mind