DTMのアプリケーションは、 Windows、MacOS はもちろん、モバイル、タブレットでも数多くあります。でも、ダンスミュージックのループによる作曲が中心だったり、打ち込みが中心のものだったり様々で、付属したり使用できる音源も様々です。操作性もそれぞれに特色があります。今回はその中でも、iOSやMacOSに標準で付属する 「Garageband」の iOS 版を紹介します。
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「Garageband」の使用理由
「Garageband」は iOS に標準で付属しているので、iPhone5 導入時から存在を知ってい ました。しかし、インターフェイスや操作方法がとても特殊な感じがして馴染めなく 、興 味を持った音色の多くも追加購入しなければならず 、しかも DTM としては打ち込みも困 難でチープな印象を持っていたので 、これまで本気で使ってみようという気にはなりませ んでした。ところが iOS11 になって大幅に機能が向上したことを Apple のサイトで知り、 使ってみようということになりました。
「Garageband」とは
「Garageband」は、楽器を演奏したことがない 、あるいはコードなどの音楽理論を全く知らない人も、アプリをいじっているだけで 、「音楽らしきもの」ができてしまう、魔法の「ガジェット(小道具 )」というところでしょうか。ガジェットという名称を冠したアプリには KORG の「KORG Gadget」がありますが、それよりもさらに「 Garageband」 の方が、「ガジェット」感、いや「おもちゃ」感が、はるかに高いです。本当にこちょこちょ触っているだけで、なんちゃってな音楽が作れます。 たとえば「Garageband」を立ち上げて新規の作曲を行うと、まず「 Touch Instrument」 のメニューが立ち上がります。これはピアノなどの鍵盤楽器なら白と黒の鍵盤、ギターやベースならネックとフレットと弦が表示されるのですが、必ずしもこれを「演奏」する必要はないのです(実際、iPad や iPhone上で鍵盤を弾いたりギターのフレットを抑えて弦を弾くのは困難です)。「TouchInstrument」の便利なところは「Smart Keybord」や 「Smart Guitar」など、コードやアルペジオを自動で奏でてくれる「 Smart」な機能が備わっていることです。これは 、「Garageband」の「設定」で、楽曲のキーを指定してやれば(無指定なら Cメジャー)、キーに応じたコードが示されるものです。
左から並んでいるコードを順番に押せば、それなりに順当なコード進行で楽器をかき鳴らすことができます。アルペジオも複数のパターンが用意されていますので、ギターならジ ャンジャンというだけでなく、ポロポロポロリンという具合に、コード進行に従って自動演奏することができますよ。
ですからスマートキーボード、スマートギター、スマートベース、スマートドラムで4パート8小節を録音(赤いボタンを押す)すれば、簡単なバッキングができて、なんちゃってな曲が完成するのです。
また、iOS11 からは、二胡や琵琶、中華パーカッションも用意されていますので、なんち ゃって中華音楽、なんちゃって女子十二楽坊まで、数分でできあがります(個人的には日本の伝統楽器である三味線や太鼓、笛などの音を用意してほしいと思うのですが、Appleは中国の巨大マーケットを意識しているのでしょうね)。
「Smart」な機能はなかなかの優れものですが、「LIVE LOOPS」も、トンデモナイ機能です。EDMやHipHopなど12のメニュー(その中の2つは Chinese です!)から選んで、こちよこちょ触っているだけで、音楽が完成します。しかも「FX」のメニューを表示してタップをなぞると、不思議な効果を追加できるのです。
もちろん、本格的な作曲も可能で、Youtubeで「Garageband」を検索すると、「Garageband edm」が検索候補の上位に現れたりします。 EDMはつまりエレクトロニック・ダンス・ ミュージックで、今日のPOPミュージックの主流と言っても過言ではありません。「Garageband」の機能を駆使しながら、キーボードなど外部MIDI入力を使って音楽作成すれば、本格的な作曲も可能になります。エフェクトやベロシティなども自由に設定できますから。
さらに、iOS11からは「DRUMMER」という音色もあり、これは様々なリアルなドラムパターンが用意されているもので 、パターンごとに複雑さや音量を変えることができるので、まさにEDM作曲の強い味方と言えるでしょう。
「Garageband」のいいところ、問題点
「Garageband」は、なんといってもその手軽さが魅力です。手軽に音楽を楽しんでみようという人はもちろんのこと、本格的な作曲を楽しむ人もiOSの「Garageband」を外出先に持ち出して、曲のアイデアをメモして、帰ってからOSXの「Garageband」で磨きをかける、ということができるでしょう。
また、用意されているリズムパターンは豊富で、カスタマイズも可能です。これだけお手軽でうれしいドラムキットは珍しいでしょう。
一方、「Garageband」付属の音色は、あまり魅力的でない、という感じも受けます。特に、シンセ系が不足していますね。iOS11からは「Alchemy シンセサイザー」が搭載されましたが、これはプリセット音主体で、普通のシンセのような音作りに向いていないのが残念です(端末を傾けると音色が変わる、といったiOSならではの面白い機能もありますが)。
でも、音色という点では、 Inter-App Audioに対応した外部音源を利用できるので、音源を拡張することも問題はありません。外部音源を「Smart」機能で奏でることができれば文句なしなのですが、これは実現が困難でしょう。
もうひとつあえて難点を挙げると、iOS版ではMIDIファイルの読み込み、書き出しに対応していないことでしょうか。このあたりは別のDTMアプリを使用するしかありません。
「Garageband」の他の機材との比較
お手軽作曲アプリとしては、カオシレーター系のものがありますが 、「Garageband」は、そうした一般的なアプリとは異なり、「音楽的な」作曲が可能である、という点に軍配が上がると思います。また、上記に挙げた「 KORG Gadget」も「Garageband」にやや近いものがありますが、これは複数のシンセやドラムマシンを組合せて作曲するという 、あ る意味で本流の DTM に近いものがあり、操作性という点では、あまり初心者向けではな いでしょう。
これらの点から、「Garageband」の利用者層や利用方法は、すそ野が広いと言えるのではないでしょうか。
その他
DTMソフトではマウスの利用が不可欠と言ってもいいのですが、iOSではマウスが利用できません。このためiOS版の「Garageband」でトラックの編集は困難を伴います。かねがねiOSでマウスが利用できればいいのにな、と思うのですが。
まとめ
「Garageband」は、これだけの魅力的なアプリがiOSに標準でついてくるのですから、iPhoneやiPad の利用者は、ぜひ、使ってみるのをお勧めします。ひょっとすると、将来的に、学校の音楽の授業で使われたりして(実際に今の音楽教室で活用されていても不思議ではありません)。
メーカーサイトのリンク
https://www.apple.com/jp/ios/garageband/
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宮脇拓也
現在作曲に没頭中。
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