Komplete 10 Ultimateのレビューその4~Reaktorパッチ編~

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Komplete 10 Ultimate(以下K10U)レビュー第4回目は、Reaktor上で動作するパッチです。数が多いので前編と後編(5回目)に分けてご紹介します。

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■変幻自在のオーガニックサウンド!新世代FMシンセ Kontour


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2オシレータのデジタルシンセ。あまり類を見ないGUIですね。
オシレータ波形の切り替えはどうやるのかな?と思って探してみても見当たらないので、NIのサイトで仕様を調べたところ、
オシレータはサイン波のみで、フェーズモジュレーション、ウェーブシェイピング、リングモジュレーションで音を作りこんでいくタイプのデジタルシンセとのことです。
なるほどそれで、PM(フェーズモジュレーション)だとかSHAPERだとかの見慣れないつまみが中央に鎮座しているわけですね。

プリセットをざっと試奏したところ、パイプオルガンやマレットのような金属的な響きのものから
歪んだリードやプラスチッキーなプラック、太いシンセベースやシンセキックのようなアナログ然とした音まで、
80年代のSF映画のような、懐かしいような新しいような不思議なデジタルサウンドがたくさん詰まっています。
サイン派だけでここまで多彩な音が出せるサウンドメイキングの自由度の高さは、まさにFM音源的な匂いを感じますね。

こういったシンセは波形が見えるほうが音の変化が想像しやすいので、波形を見る方法はないものかな?と弄っていたら、
画面上で右クリックするとメニューが現れたので「Veiw A」を選択してみたところ、波形を見れるモードに切り替わりました。

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この「Veiw A」モードは後述のDRAMA、COLOR1、COLOR2、LOUDNESSの4つのパラメータ表示に限定しているようです。
再び右クリックメニューで「View B」を選択することでメイン画面に戻れます。
小さくても良いので、波形はメイン画面で表示できるようにして欲しかったですねw

画面上部のDRAMA、COLOR1、COLOR2、LOUDNESSの4つのダイヤルは画面内にある各パラメータとリンクしていて、
4つのダイヤルとリンク先のパラメータの色で、その連携状態がわかるようになっています。
そして4つのダイヤルはKomplete KontrolやKOREなどのハードからダイレクトに操作しやすい設計になっています。

Kontourはいわゆる一般的な減算アナログシンセとは音作りの方法も異なるため、慣れるまで少々時間がかかると思います。
まずはこの4つのダイヤルを弄って、サウンドエディットに慣れるのが良いのかな、と思いました。

 

■EDMにも強い?アナログ・デジタルのハイブリッドシンセ Rounds


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アナログ・デジタルのハイブリッドシンセです。
その名のとおり、画面中央部の8つの大きな丸いダイヤル状の「ブロック」内の4等分された「セル」がクルクルと回りながら順々に演奏されるのが特徴的ですw

Roundsには2オシレータのアナログシンセが8パート、2オシレータのFMベースのデジタルシンセが8パート用意されており、
これらを各ブロックのセルにアサインしたり、アサイン後のセルをクリックすることで各パートの演奏をオンオフすることができます。
また、ブロック中央部分の∞のようなボタンをクリックしてアクティブにし、QUANTのパラメータを調整することで各セル間で音の被りやモーフィングの具合を調整できます。

画面上部はブロックにアサインされたセルをどのような順番や方法で演奏するかを切り替えられます。
左から1つ目と2つ目のアイコンのローテートモードではノートオンするごとにセルを時計回りで順番に切り替えて演奏、
真ん中のサイコロアイコンのランダムモードではセルをランダムに切り替えて演奏、
4つ目のアイコンのレイヤーモードは4つのセルをまとめて演奏、一番右の鍵盤アイコンではセルの左上のみ演奏といった感じです。
セルの演奏方法にはモノ、ポリ、ユニゾンの3つのモードがあり、例えばスタブ系のサウンドをユニゾンにすることで分厚い音が得られます。

rounds3NOTE、SEQ、TIMEで演奏のモードを切り替えることで、ブロックの1~8をアルペジエーター的にシーケンスしたりもできます。

モードをCONTROLに切り替えると各シンセパートのシーケンス用のCOARSE(音程)が横並びで表示されます。
ここでCOARSEの値を上下させることで、MIDI入力されたノートの音程を相対的に幾つ上下させるか、を設定することができます。
また、後述の「Veiw A」モードでの8つのマクロコントロールのパラメータアサインもここで行えます。
アナログのみ、デジタルのみ、アナログ・デジタル混在時など、パッチごとに操作させたいパラメータを8つに絞り込んで設定できます。

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Roundsにも「Veiw A」モードがあり、右クリックメニューからこちらを選択するとシンプルなエディット画面に切り替わります。
つまみが8つ並んでいますが、CONTROL画面で設定されたマクロコントロール用のパラメータのみが表示されます。
ライブでリアルタイムにつまみをグイグイ回してサウンドの変化を楽しむなどのパフォーマンス向けと言いますか、
これこそまさにKomplete KontrolやKOREなどのハードにあわせた設計といえますね。

NIのシンセは硬質でちょっと独特なエレクトロニカやテクノっぽいプリセットが多い印象なのですが、
Roundsのプリセット前半にあるベースカテゴリのサウンドは、EDMっぽいブリブリしたリードやベースのパッチが多数収録されていて、いきなり実践的な感じですw
ハードシンセも触って数分でその魅力を知って欲しいということから、プリセットの前半バンクには派手な音を収録する傾向がありますが、
このRoundsにもEDMクリエイターにこそ触って欲しいという、NIのサウンドデザイナーの思いが込められているのかもしれませんw

 

レイヤーで複雑なドラムサウンドメイキングを Polyplex


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サンプルベースの飛び道具的なドラムマシン。画面上部に8つパッドがあり、MIDIキーボードのCDEFGABCで各パッドを演奏ができます。
画面下部では各パッドごとに4つのサウンドをレイヤーして音作りができる画面があります。

大雑把な音作りとしては、MAINのTYPEでキックやスネアなどのサウンドのカテゴリを選択し、
SUBTYPEでは具体的なサウンドの種類、例えばTR-808系のスタンダードなアナログドラムや、エフェクトでクラブサウンド的に加工されたドラム、
声やベースのワンショット、浮遊感のあるパッド等の、あらかじめプリセットされた波形を選択することでサウンドキャラクターが決定します。

サウンドキャラクターを決定したあとは、SAMPLESのスライダーを動かすことで、TYPEごとにマッピングされた波形を切り替えることができます。
(波形のマッピング状況は、画面最上部にあるサンプルマップエディタを開くことで確認できます)
そして、PITCHやSTART、PAN、VOLUMEなどのパラメータを微調整して、これを4つレイヤーすることで1つのドラムサウンドとなります。
このあとはENVELOPEやEQの画面で更に細かく音を作り込み、GLOBAL FXでエフェクトをかけて味付けをしてやります。
サウンドエディットの感覚は、Rolandの4ストラクチャーのPCMハード音源などに似ているかもしれません。

画面最上部にあるサンプルマップエディタを開いてエディットすることで、オリジナルのユーザー波形も追加できるようですが、
パッドの数も少なく、BatteryやKontaktに波形を追加してドラムパッチを組むよりも直感的ではないため、手間がかかる印象があります。
またプリセットサウンドのみを使ってPolyplexをメインのドラム音源にするのはちょっと厳しい感じもあるので、
BatteryやKontaktをメインとし、そのサポートとしてPolyplexを使うというのが面白いかな?と思います。

各パッドのすぐ下にサイコロのアイコンがあるのですが、ここをクリックするとサイコロが転がるアニメーションが発生して、
各パッドごとの4つのレイヤーのパラメータがランダムに変化することでサウンドが変化するようです。
サイコロから近いところ(向かって左側)をクリックすると音の変化は少なく、逆にサイコロから遠いところ(向かって右側)をクリックすると音が大きく変化します。

また、レイヤーの各パラメータの下にもサイコロがあり、やはりサイコロを転がしてやることで、同様に各パラメータがランダムに変化します。
この機能はBatteryやKontaktにはないので、音作りのアイディアサポートとして面白いと思います。まさに運任せ、「賽は投げられた」といったことでしょうかw

 

■長年愛され続ける往年の名機がReaktorパッチとして復活! Monark


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Komplete 9から突然登場したMinimoogリスペクトなアナログシンセ。
NIといえばProphet-5のリスペクトシンセであるPro53からその歴史がスタートしており、私もPro53を愛用していましたが、時代の流れなのかディスコンになってしまい、はや数年経過しました。
そんな最中にNIが久々に実機シミュレート系のシンセをReaktorパッチでリリース。なぜ今Minimoog?と思いつつも、個人的にはかなり興奮しましたw

私は実機のMinimoogを所有したことがないので、どのぐらい音が似ているかはわからないのですが、こういったシミュレート系はGUIを見るだけでも非常にワクワクします。
つまみやスイッチなどの配置も本物のMinimoogに近いため、実機オーナーの方も抵抗なく触れるのではないでしょうか。

Monarkは構造的には3オシレータのごく一般的な減算アナログシンセです。実機同様にモノフォニックのシンセサイザーであるため、和音は演奏できません。
しかしその分、1音に3オシレータすべてのエネルギーを注ぎ込めますので、出音が非常に太い。ベースやリードなどを演奏していると、キーボーディストの氏家さんじゃなくてもゴキゲンになれますw

NIのシンセは良い言い方をすると下から上までクリアに音が伸びる、悪い言い方をすると冷たいデジタル的な音が特徴ですが、
そういった意味ではこのMonarkはあまりNIらしくないといいますか、低域から中域にかけて独特の粘りと歪みがあり、実に往年のアナログシンセ的な太さを感じますね。

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さて恒例の「Veiw A」モードはと言いますと、こちらは別画面というよりはメンテナンス画面ですね。
レガートやピッチベンドなど、Monarkの演奏に関する設定を変更できますので、しっくりくる設定に変えてしまうのも手ですね。

Reaktorパッチは独創的なオリジナルシンセが多い中、シミュレートシンセであるMonarkは逆に異彩を放っている気がします。
是非ともこの勢いでPro53やその他レジェンドなアナログシンセもReaktorパッチとして復活させて欲しいですねw

(参考動画)キーボーディストの氏家さんによる実機Minimoogのデモンストレーション
https://www.youtube.com/watch?v=j5d0O8Sr_Vw

 

■波形をスキャンするSF的サウンドスケープ音源 Skanner XT


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ハリウッド映画や洋ゲーのような近未来的でSFチックなサウンドが特徴的なサンプルベースのサウンドスケープ音源。
画面上部に表示されている波形の一部分をループ再生することで独特のサウンドを出力します。

特にMotion系のパッチを選択するとこのシンセの特徴が見えてくるのですが、波形の再生ポジションバーが左右に動いたりしています。
波形をスキャニングしているように見えることから、おそらくSkannerという名前がついたのでは?と勝手に思っていますw

Skanner XTをエディットしながら演奏する場合、まずPRESET MORPHERをアクティブにするところからスタートします。
円形のダイヤル状に配置された1~8をクリックすることで波形の再生ポジションが切り替えられます。
面白いのはこの1~8のポジションを移動するときのサウンドの変化で、スクラブ再生用に割と激しく、しかし非常に滑らかにモーフィングします。
またモーフィング中は画面上部の波形上のポインターも連動して動きます。モーフィングさせているだけでもかなり楽しいですw
POSITIONを右に回すと移動先に、左に回すと移動元に近づきます。SPEEDでモーフィングの移動速度を変更できます。
GROUPを押すと同一カテゴリ内のパッチを12番→20番→28番→36番…といった感じで8つ飛ばしで切り替えられます。

画面左にはLFO、画面右には4つのマクロコントロールがあり、ここで更なるサウンドのエディットやコントロールが可能です。
LFO AMOUNTのスライダーを右に動かしてやると、POSITIONやマクロコントロールのパラメータもLFOで自動制御でき、より複雑なサウンドモーフィングが行えます。
マウスでも制御できますが、Komplete KontrolやKOREなどのハードがあれば、本体のつまみでより簡単にリアルタイムに制御できます。

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Skanner XTの「Veiw A」モードはメイン画面である「Veiw B」モードと打って変わって非常にパラメータが多く、かなり緻密なエディットができるようになっています。
ちなみに「Veiw A」モードに切り替わる際にPRESET MORPHERがオンになっていると、警告ダイアログの後、強制的にオフになります。
右上のSAMPLEに表示されているのが、サウンドのキモとなる波形で、プリセットは23種類です。
24番目以降には自作のユーザー波形も追加できるようです。(プリセットはもっとたくさん用意して欲しかったかも…)

ソフト音源に例えるとAbsynth、ハード音源に例えるとKORG WaveStationのような感じですが、それらよりももっと機能的にはシンプルです。
楽曲のイントロ・アウトロ・ブレイクや、映像作品のサウンドスケープとして、ちょっと不思議なSF的なパッドサウンドを導入したいときに便利な音源です。

そういえば、つい最近Reaktor 6が発売されましたね。実に10年ぶりのメジャーアップデートなので次のKompleteに収録されるのか気になっていますw
以上、第4回目のレビューでした。5回目はReaktorパッチ後編です。お楽しみに!

第1回目
第2回目
第3回目

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Dee!

Dee!

俺++(Includeore)やAVSSで作編曲、PCVJ/PCDJ。
クラブ系、歌物、ボカロ、同人なんでも。本業はWeb系。
元Rock oN Company/MI所属。

Web : http://includeore.com
Twitter : https://twitter.com/Includeore
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