WAVE社から発売されております、APICollectionシリーズとVシリーズのレビューを行います。
(以下APIとVと省略します)
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1.概要
API、Vシリーズ共に、昔のミキサーコンソールやアウトボードをモデリングしたエフェクトプラグインとなっています。APIは名の通りAPIコンソールのモデリング。VはNEVEをモデリングしています。
WAVESのAPIは、APIと共同開発ということで見た目もそっくりな作りになっています。
APIシリーズには、バスコンプレッサー1つと3つのEQがセットに。Vシリーズでは、コンプ1つと2つのEQがセットになっています。
APIシリーズ
【API-2500】 見た目からやる気が湧きそうなコンプレッサー(笑)
スレッショルドからリリースまで、一般的なコンプになってます。下段左側のTONEの部分でAPI独特の音作りが行えます。ここをいじり倒すことが、APIの醍醐味です!
左から、【API-550A】 【API-550B】 【API-560】
それぞれ見た目がわかりやすい、EQとなっています。
550シリーズのブースト、カットが2dbずつというのもAPIシリーズ大きな特徴です。
HFやHMFのブースト具合が、いい具合と印象を受けます。積極的にブーストしてもOKか?!
Vシリーズ
【V-Comp】APIと比べて、荒っぽい感じがするでしょう(笑)
こちらのコンプには、スレッショルドがなく、INPUTでどれだけコンプに突っ込むかを調整する事ができます。レシオ6:1までしか無いですが、これで十分。3:1でも、「本当かよ」というぐらい潰してくれます。
上が【V-EQ3】下が【V-EQ4】
こちらのEQも見た目にわかりやすいですね。
APIと違い、ゲイン調整を0.1db単位で行えるので、APIとの差別化ができていますね。
これも、HF、HMFのブーストを積極的にやっちゃうと良くなったりします。
2.購入理由
レコーディングの監修時に、「うちのスタジオには、実機NEVEが4機もあるんですよ!」とか、「SSLのバスコンプレッサはいい!」「挿すだけで音に元気が出る」などの話を聞きます。
APIやNEVE、SSL等、名機とされるビンテージのエフェクトですが、スタジオでじっくり自分の曲等で試す事もできず、「そんなにいいものなのか?」と気になりだしてきたところ、セールにてAPIとVシリーズが売られおり、その名声を試すチャンスと購入しました。
ちなみに、実機では1つ購入するだけで車1台が購入できてしまうぐらいのお値段。メンテナンスも大変ということで、個人的に試すにも調度良いかと思います。
3.大前提の話として
さて、APIもVシリーズも、コンプとEQということで土台の音作りに使用するエフェクトです。
今回のレビューでは、それぞれの使い方等を細かく説明するより、実際に挿した時の音を聴き比べて頂くことが1番だと思います。
が
さて、実際に差が明確にわかるものかが心配です。
というのも、私自身がサンプルを制作し、聴き比べたところ、明確に文章で説明することが難しい事に気がついたからです。
これには、私自身のMIXがイマイチという部分もありますが、大前提として「各エフェクトの使いどころは自身の経験によるものが大きい」と思うからです。
「こういうサウンドがほしいから、APIを挿そう!」と思うには、今までAPIを使った音作りを何度も行った結果、APIを選択できる訳で、「APIは名機だ。挿せば良い音になる」と言った、なんとなしに使っているうちは、APIの良さは分からないものと思います。(中にはなんとなしでOKの場合も当然ありますが。)
サンプルをお聞き頂く前に、いきなり出鼻を挫く話となってしまいましたが、以下より、サンプルを制作する際、私が感じた印象をなるべく詳しく書いていきます。この部分をレビューとし、ご参考いただければと思います。
4.サンプルについて
サンプルは、ドラム・ベース・ギター・ピアノのロックバンドをイメージした曲です。
ドラムはBFD3、ベースはKONTAKTのFactoryプリセットベース。ギターは生録音。ピアノはPianoteqを使用しています。
ギターはダブルで録音しています。
制作したサンプルは、以下の4つ
- 全くエフェクトを使用していないトラック(音圧を揃える為、L2等のリミッターは使用)
- WAVES APIシリーズで制作したトラック
- WAVES Vシリーズで制作したトラック
- Cubase付属のプラグインで制作したトラック
エフェクトを使用したトラックでは、各パートに、コンプ→EQの順番で挿し、更にマスタートラックにも同じ順番でエフェクトを使用。最後に音圧を出すために、L2等のリミッターで補正してあります。
また、設定はすべて対応する楽器のプリセットを選択し、音量のみ調整したものです。
A.全くエフェクト使用していないトラック
フェーダーだけ整えました。完成したトラックを聞くと、まぁこんなものかなと。
EQとか全く調整していないので、下の方がモコモコと気持ち悪い。
ギターも埋もれちゃって、ドラムもパンチが効かない感じです。各種音源の「そのまま」を合わせただけなので、もともと強い音色が勝っちゃう感じだと思います。
B.WAVES APIシリーズで制作したトラック
Drums API-550A → L1
Piano API-2500 → API-550A
Bass Rbass → API-550A → API-2500
Guitar API-2500 → API-550A
Master API-550B → API-2500 → L2 → L3
一度聞いた後、上記Aのサンプルを聴き比べると、確かにこのAPIの方が良くなっているように思います。
印象としては、どの楽器に対しても、綺麗にオイシイ部分を強調してくれるようなエフェクトだと思います。ドラムへのエフェクトはドラムキットに対してかけておりますが、各キット、サンプルAに比べタイトに仕上げてくれています。
ギターのプリセットも、バッキングとしてザラっとしてくれて、かつ耳障りではないように調整してくれています。
APIシリーズとして特筆すべきはEQのゲインにあり、2dbの増減で調整します。これが意外にMIX時の迷走を防いでくれて、思い切ったMIXを施すことができます。その思い切りが良い方向に動く傾向なので、よいプラグインだと思います。
C.WAVES Vシリーズで制作したトラック
Drums V-EQ4 → L1
Piano V-Comp → V-EQ4
Bass Rbass → V-Comp → V-EQ4
Guitar V-Comp → V-EQ4
Master V-Comp → V-EQ4 → L2 → L3
こちらも、サンプルAに比べ、良くなったように聞こえます。
APIシリーズと比べると、音が元気というか、太いというか、勢いのあるサウンドになったかと思います。
VシリーズはAPIシリーズに比べて、ロック向きなエフェクトだと思います。
コンプを触るとわかるのですが、APIのコンプと異なり、スレッショルドが無いタイプのコンプとなっています。インプットの調整でスレッショルドの具合が変更されるような作りとなっています。
今回ギターは、クリーンなバッキングトラックですが、もっと歪ませたギターの楽曲では、APIよりVシリーズの方が効果が高いかもしれませんね。
ドラムも同じく、ラウドな音色を選択すると、Vシリーズの方がよいかもしれません。
D.Cubase付属のプラグインで制作したトラック
Drums StudioEQ → Compressor
Piano VintageCompressor → EQ
Bass Rbass → VintageCompressor → StudioEQ
Guitar TubeCompressor → VintageCompressor → StudioEQ
Master Maxmizer → L2 → L3
最後に、Cubase付属のエフェクターで音作りをしました。
EQは主に、StudioEQでこもりがちな500hzあたりをカット。逆にギターを500hz足して、全体的にハイシェルフで明るさを出しました。
サンプルAと比べ、音のこもり感は解消されましたが、APIやVシリーズと比べると、あまり特徴のないMIXとなったと思います。
4つのサンプル総評
まず、APIとVシリーズの特徴をまとめますと、
●APIシリーズ
- コンプ、EQ共に綺麗に音作りをしてくれる
- EQのゲインが±2dbとポイントが決まっているので、迷走しない
- EQブーストしても、綺麗にブーストしてくれて基のトラックを濁さない(気がする)
- 上品な印象を持った
●Vシリーズ
- コンプはパンチの効いた音作りに有効
- EQはAPIシリーズと同じく、ブーストに無理が無い気がする。APIより荒い音付け(良い意味で)
- EQで5khzをブーストするだけで、良くなった気がするエフェクト
- 荒くれ野郎という印象を持った
となります。
大前提の話に記載しましたとおり、どのエフェクトを使用するかは、MIXの経験から選択することになりますが、私は音作りの方向性として上記の点を参考に選択していこうと思っています。
CubaseのEQやコンプに関しては、今回の比較で、特徴が無いエフェクターだと思いました。
逆に言えば、大きくキャラを付けたくない場合においては、Cubaseのエフェクターを使用すれば良いのではないでしょうか?
そもそも、APIだろうがCubaseだろうが、コンプ、EQ等のエフェクターは見た目は違えど同じ内容のエフェクターです。
5.コンプやEQの購入について
さて、今回のようにEQやコンプのレビューを行いましたが、他のレビューに比べて、非常に難しいと感じました。「確かに音は変わったのはわかった。けど、うーん」と思った方もいるのではないでしょうか?
こればかりは、実際に購入やデモを使用して自分の楽曲で試してもらうことが1番良いと思います。
APIシリーズもVシリーズも、評判が良いとされていますが、はたして何を持って良いと判断されているのか。人それぞれ違うと思います。
私はAPIシリーズは上品、Vシリーズは荒くれ野郎という印象を持っているので、楽曲制作の際には、その印象に近くするようにエフェクトを選択しようと思いますが、コンプ、EQ系のエフェクトは、そういった「正解の無い」エフェクターに分類されるのではないかと思います。
この両シリーズは、使用期間以外一切の制限の無いデモ版がリリースされています。購入するかどうかは、まずこのデモ版を試してみて検討してみてはいかがでしょうか?
また、デモ版を試さず、「コンプ、EQの選択肢として持っておく」という選択もありです。色々なコンプ、EQを試してみて、自分なりの「名機」として引き出しを多く持っておくこともMIXにおいて重要なことだと思います。
以上「プラグインWAVES APICollection&Vシリーズのレビュー」をお送りしました。最後までお読みいただきありがとうございます。
関連サイト
Waves社HP
http://www.waves.com/(日本語サイトもあります)
デモは、上記HPからのみ入手することができます。
代理店HP
http://www.minet.jp/
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CubaseCreate
Twitter@CubaseCreate
アミューズメント関係のサウンドを制作しています。Cubaseを用いて、作曲や効果音の制作を行っています。家ではバンドや結婚式用の楽曲や映像制作を行っています。楽器はキーボードを担当です。
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