2000年から続くYAMAHAのオールインワンシンセのフラッグシップモデルである、MOTIFシリーズ。 DTM全盛の現在だからこその、オールインワンシンセの立ち位置を個人目線で紹介します。
★YAMAHA MOTIF XSの音の傾向
国内三大メーカーの中では、プリセットの音色は比較的クセのない音が多いように思います。 ハデな音色が少ない、といった方がわかりやすいでしょうか? その代わりに、使い勝手がよく外れの音色が少ない印象です。
基本プリセットの音色は初代MOTIFからほぼ変わらないのですが、同じ名前の音色で比べるとXS以降、レンジ・ダイナミクスが広くなり、より繊細なサウンドになっています。
出音としては全般的に音が太く、ライブでの音抜けもかなりいいです。 流行の軽量タイプのシンセとは、ここの違いがそのまま価格の違いになっているように思います。
この出音の部分については、DTMでソフトシンセと併用する場合もそうですが、内蔵のEQで不要なところを削っていく音作りが効果的。 昔からYAMAHAの音は、オケにまざると存在感を増すなんてことを言われていますが、ブラスやストリングスなどの生楽器のシミュレートは単体で聴くとちょっともの足りないようで、周りの音を積み重ねていくと、なかなかリアルに聞こえたりするから不思議です。 そういう点でも比較的、POPS・歌もの向けのシンセサイザーといえるかも知れません。
さらにXS以降に搭載されたアナログ系エフェクターのおかげで、エレピやオルガン、ギターなどもよりリアルなキャラクターになっています。
★YAMAHA MOTIF XS はDTMでも活躍
DTM環境においてソフトシンセ全盛の現在ですが、個人的にはこのMOTIF XSだけは制作環境から手放せない存在です。 なにより、公式Webサイトで提供されているエディターを使うことで、ほぼソフトシンセと同じような操作感を味わえます。
特筆すべきは、16トラックのマルチティンバーであるSONGモードの中で、音色を一から作り込めるということ。 従来のように、VOICEモードの中で作った音をUSERバンクのストアして、SONGモードで呼び出すといった手間がなく、プロジェクト単位で音色を管理ができるんです。 これで、CPUの負荷がなくストレスフリーで作業できるのだから、ソフトシンセ以上の使い勝手の良さと言えると思います。 当然、オーディオの書き出しが手間なのは否めませんが、、。
★YAMAHA MOTIF XSのライブでのパフォーマンス
ライブにおいても、上記の理由からSONGモードで使うことが多いです。 曲単位で音色を16トラック用意できるため、やたらと音色に切り替えが多い楽曲では重宝します。 しかも、その中でレイヤーやスプリットも出来、もう一台MIDIキーボードを用意して、弾き分けることもできます。
もちろんライブ向けのPERFORMANCE(最大4音色)モードもあるので、曲毎に使い分けて、ライブの際はセットリスト順にMASTERモードで並べ替えると本番中はページの切り替えだけで素早く操作できます。
ちなみに、他のメーカーも最近は対応し始めているのですが、今弾いている音色を残したまま音色の切り替えが可能(鍵盤を離すと音が消える)になっているのも演奏面では非常に便利。 他にも、サンプリングやボコーダー用に用意されているオーディオ入力部分もPERFORMANCE・SONGモードではライン入力として扱えるので、二台目まではミキサーなしで且つ、内蔵のエフェクターをかけて演奏できるのも重宝します。
★そもそもオールインワンシンセとは?
今では当たり前過ぎて有り難みがなくなりつつある、オールインワンという響き。 音源、シーケンサー、エフェクターが一体になったものがそもそもの定義で、さらにサンプラーやアルペジエーター・マスターキーボード機能が追加されてより強力に進化したように思えます。
ですが、DTM全盛のこの時代にシーケンサーの有り難みがどうも薄れているように感じます。 正直なところ価格的に安くなるようならば削ってもらってもいいんじゃないかなぁ、と思うんですよね。 もちろん機能的には充実しているんですけど、やはり出番が少ないというか、、。 これが4TRくらいのMTRとかになるとまた話が変わってくるんですけどね。
MOTIFシリーズももう10年以上続いてますから、そろそろ新しいシリーズが出てくるんじゃないかと期待しています。 これから進化していくなかで、次はオーディオデータとのつきあい方がもっとシームレスに出来てくるとまた、ライブ・DTMの両面で頼れる楽器になるんじゃないかと思います。今回はキーボード:YAMAHA MOTIF XSについてのレビューでした。
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