今回は主に、Propellerhead Reason 7.1についてレビューします。
■■■ Reason 7.1の特徴 ■■■
2014年4月、Reasonのバージョンは7.1になりました。
これは無償での提供ですが、バグフィックスではなく性能がアップしました。
とはいえ残念ながら、Reason 7.0.1からReason 7.1.0への変化はエンドユーザーが肌で実感できるような、派手なバージョンアップではありません。
具体的には、SDKのバージョンが2.0になりました。
※Propellerheadから届いたメール(一部抜粋)
さて、このSDKについて掘り下げるには、Reasonのバージョンを6.0まで遡らなければなりません。
前回の記事「Propellerhead Reasonによる音楽制作環境の革命」でも触れましたが、VSTのSDKを公開することでフリーのVSTプラグインが世に溢れ、オープンに発展してきたCubaseに対し、Reasonはあくまでもクローズドで厳選されたユニークなデバイスの追加などにより発展を遂げてきました。それが、Reason 6.0.2までです。その次のバージョンである、Reason 6.5は無料で公開されました。
Propellerheadは単なるバグフィックスではない結構なメジャーバージョンアップを太っ腹で無料公開してきた過去があります。たとえば、Reason 2.5では、RV7000という高性能なリバーブを始め、合計で6台ものデバイスを追加した新バージョンを、惜しげもなく無償で提供するという大きなサプライズがありました。
Reason 6.5では、さらにそれを凌駕する大改革が成されました。
それまではクローズドだったSDKをデベロッパに公開し、サードパーティからのデバイスが供給されるようになったのです!!!
ただし、VSTの様な公開手法ではなく、ReBirthでの公式Modsを更に厳格にしたシステムの様です。私は、ReBirthでの公式Mods制作にあたり、PropellerheadとFaxで契約書を交わした経験がありますが、Rack Extensionsではデベロッパ登録をしていないので、そこから先のことまではわかりかねます。
…といったサードパーティ参入という変革を経て、そのSDKが2.0にバージョンアップしたのが、Reason 7.1です。
■■■ Rack Extentionsとは ■■■
簡単に言ってしまえば、Propellerhead謹製ではないサードパーティ製のデバイスもあるよ、ということです。もちろん、Propellerheadも率先して素晴らしいRack Extensionsを数多くリリースしています。
では、Subtractor、Thor、Kong、The Echoなど従来のデバイスと何が違うのか?
何も違いはありません。厳密には「エンドユーザーは違いを意識する必要も違和感すらも無い」でしょうか。
従来のデバイスと同様にラックに積み上げ、ルーティングし、打ち込むだけです。強いて挙げるなら、日本語版マニュアル率が低下したことぐらいでしょうか。サードパーティ製Rack Extensionsは致し方ないとしても、Propellerhead製Rack Extensionsですら、SynchronousやParsecなどは未だに英語版マニュアルのみです。どういったルートで翻訳を依頼しているのかはわかりかねますが、ここは日本での代理店であるKORGに頑張っていただきたいなぁ〜…という思いはあります。
とはいえ、デフォルトでも使い切れないほど大量に搭載されているデバイスでもまだ飽きたらず、Rack Extensionsにまで手を出してしまうようなReason好きなら、英語版マニュアルすら読まずにサクッと独自の使い方を編み出す方が多いのかもしれませんが、英語が苦手な日本の若手ホープたちにReasonの素晴らしさをお奨めするにあたって、日本語版マニュアルの充実度が低下しつつあるのは少々悲しい現実ではあります。
■■■ ReFillは終焉か!? ■■■
Rack Extensionsという従来のReasonにとって革新的な音源提供によって忘れてはならないのがReFillの存在であるのは言うまでもない。ReFillとは、WAV、AIFF、ACID、REX、NN-19、NN-XT、EXS24、KONTAKT、などに代表される、サンプリングCDには結構な高確率で収録されているファイルフォーマットであり、Reasonの音色ライブラリです。SubtractorやThorで自在に音作りが出来るスキルがあっても、本物の弦楽器や管楽器、打楽器などを生演奏で、しかもマルチサンプリングするのは個人ではなかなか時間的に厳しいです。
私自身、なかなか気に入ったギターが見つけられず、自ら演奏してマルチサンプリングした経験がありますが、パワーコードに関してはREXファイルとして完成させ、実際にそれを使った曲を何曲も仕上げましたが、各フレットと各弦を単音でレコーディングしたデータは、生波形のままもう何年もハードディスクに放置されています。そういう作業工程を考えると、やはりReFillは大変便利なReason専用の音色ライブラリといえます。
Rack Extensionsでも、たとえば、GForce Re-Tronなどはメロトロンをエミュレートしつつ進化させた、大変ユニークなサンプリング音源だと思いますが、個人的にはRack Extensionsに期待するのはシンセやエフェクタやユーティリティであり、サンプラーではないのですね。
さらには、新たにリリースされたRack Extensionsの音色ライブラリとしてのReFillといった需要もあるのではないでしょうか。個人的にはGForceにimpOSCarやOddityあたりをRack Extensionsでのリリースに期待したいところですが、現行のRack Extensionsで最も素晴らしいのは、やはり、Propellerhead PX7ではないでしょうか。
これはあの、YAMAHA DX7をエミュレートしたRack Extensionsであり、しかも各オペレータにPANが設定できるという、筆舌に尽くしがたい仕様となっています。しかも、2GBもある、PX7-200k-Collection.rflというPX7専用ReFillがPropellerhead公式サイトで無料配布されています。何という太っ腹!!!
…といった展開を見ていると、Rack ExtensionsはReFillに取って代わるわけではなく、相互に発展していきそうですね。いや、是非そう願いたいところです。
Rack Extensions登場前から十分に楽しいReasonでしたが、Parsec、Synchronousほか列挙しきれないくらいに可能性を秘めたRack Extensionsが目白押しの現在のReason。是非、ご注目ください。
今回はPropellerhead Reason7.1のレビュー〜音楽制作環境の進化〜についてお伝えしました。
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