YAMAHA THR10 レビュー

 

%e7%94%bb%e5%83%8f1YAMAHA THR10 レビューをお送りします。

購入に至った経緯


当時から音楽制作専門でほぼヘッドホンやモニタースピーカーからの出音でギターを演奏することが多い私は、自宅で気軽に音を出せるような練習向け小型アンプを所有していませんでした。
所有していたのは小規模な演奏で使用するために購入した比較的小型の真空管ヘッドアンプ、そして音楽制作用・生演奏時の持ち出し用にも所有しているラックプリアンプ。
しかしながら小型な真空管アンプとはいえ、そこそこの音量を出さなければ細い音になり、自宅ではあまり楽しめない状況でした。
また、真空管アンプでは、演奏前にその都度電源を入れて真空管を暖めるか、気軽に弾く一瞬のためにずっと電源をつけていなければならず、気軽に楽しめるかどうかと言われると極めて微妙なところでもありました。
そこで気軽に電源を入れて演奏できる良い小型アンプを探し始めたのでした。
ただ、小型アンプ、特に真空管アンプを再現したモデリングアンプにはいいイメージがなく、過去にそういった類の安アンプで幾度となく失敗していた私は、色々なアンプを検討しては購入を躊躇している状況でした。

そこでYAMAHAのTHR10が発売されたのです。発表当初から話題になっており、発売後に公開された幾つかの紹介動画で聴いた音に少々驚きまして、興味を抱き始めたわけです。
もちろん最初は半信半疑で、「音は良くても実際弾いたら手応えとかスカスカなんじゃ?」と思いながらも、「ネタ半分で買ってみるか…」と自分への誕生日プレゼント的な意味合いも込めて購入に至りました。

今回はそのTHR10をご紹介したいと思います。

 

機能について


操作感はギタリストの皆様であればほぼ説明するまでもないシンプルなレイアウトなので、直感的な音作りが可能です。

mxl7705

アンプモデリングの大まかな特徴は以下の通りです。 (具体的にどのメーカのモデリングかはある程度伏せて紹介します。)

・CLEAN
リッチできらびやかななクリーントーン。おそらくF系アンプのモデリング

・CRUNCH
明るめで中域〜ハイミッド寄りなサウンド。歪みはほぼクリーン〜僅かにクランチする程度。著名なクラスAブリティッシュアンプだと思われます。

・LEAD
メーカー説明からM社のスタックアンプだと思われます。歪みはクランチ〜オーバードライブ程度。

・BRIT HI
おそらくM社のブリティッシュハイゲイン。かなり歪みますがMODERNよりはウォームな音色。

・MODERN
M/B社のアメリカンモダンハイゲイン。音は上記より鋭め。すごく歪みます。

・BASS
ベースアンプのモデリング。ベースの練習でもそれなりに使える音です。

・ACO
エレアコやエレガットに最適な音色。ピエゾの細い音色でも豊かな音色にしてくれます。

・FLAT
アンプシミュレーターを通さないトーン。ギター・ベース以外の楽器を繋ぐ際に便利です。

AMPで好みのアンプモデリングを選び、イコライザ(BASS・MIDDLE・TREBLE)で音色を調整、GAINで歪みの量を調整します。

特徴的なのは、GAINとMASTERに加えてVOLUMEがある点です。
これはGAINでプリアンプの歪みの量を調節し、MASTERでパワーアンプの音量を決定した後に、VOLUMEで全体の音量調節が出来る仕組みになっております。
本物の真空管アンプでは、パワーアンプの音量を上げて負荷をかけることで初めて豊かな音色を得ることが出来ますが、音量が無駄に大きくなってしまうという欠点があります。
それらをGAINとMASTERで再現したうえで最終段のVOLUMEで音量調節出来るようにしたことで、真空管アンプを大音量で鳴らした時の素晴らしい音色を、より小さな音量で再現できるようになっています。

その他、ディレイ・リバーブとそれ以外のコーラス・フェイザーなどエフェクトは個別に設定でき、デジタルオーディオプレーヤー等を繋ぐAUX端子や、チューナー機能など練習に役立つ機能も多いです。
気に入った音作りが完成したら左上のUSER MEMORYを長押しすることでプリセットを保存することも可能です。

また、PCとUSB接続し、THR Editorを使用することでより細かく音作りすることも可能です。

 

アンプとしての音色


気になる音色ですが、元になっているであろうアンプと似ているか似てないかはあまり問題にならないほど、とにかくどのアンプモデリングも非常に「使える」音色になっていると感じます。
弾いた時のレスポンスも良く、真空管特有の跳ね返るようなコンプ感も完璧ではないにしても程よく再現されており、演奏するときの肉厚な手応え感は昔のデジタルアンプに比べて非常に自然になった印象を受けました。
これらの特徴を持つアンプで練習することは、演奏の上達、特にピッキングを上達させることにおいて大変意味のあることになります。

全体的な出音の傾向は硬さを残しつつもやや滑らかな傾向ですが、上記の通りコンプ感やレスポンスがかなり良くなっているので、ピッキングで音色を調整するような演奏にもしっかり追従してくれます。
(ヘッドホン端子からの出力はもう少しコンプ感が強めです。)
加えて、比較的暴れが少なめで大人し目な音色であることも特徴的だと思います。
個人的にはLEADでGAIN・MASTERフルアップに近い状態にした時のオーバードライブサウンドが、滑らかでかつピッキングへの追従性が良くかなり気に入っています。

 

その他の長所


上記した通りアンプとしてかなり使える音色であることはおわかり頂けたかと思いますが、その他の音響的側面についてもかなり優れており、高音質であることも上げられます。
とにかく音がワイドで立体的に広がる音響設計になっており、特にAUX端子からiPodなどのデジタルオーディオを鳴らすと、低音は控えめながらもギターアンプらしからぬその音質の良さに驚くのではないかと思います。
オーディオ再生機器としてもなかなか優秀だと思います。

この特徴はギターアンプとしても恩恵があります。
例えば従来の小型ギターアンプでは床に置いて鳴らすと音がこもって聴こえてしまうため、スピーカーの角度を上向きに変えて聴き取りやすくする、という行動を取ったことがある方も多いのではないかと思いますが、
THR10では音がワイドで立体的に広がるため、これらを解消し、床に置いて鳴らしてもしっかり音が聴き取れるようになっております。

また、PCとUSB接続することでオーディオインターフェースとして使用することも可能で、PU用スピーカーとしてこの音質の恩恵を受けることも出来ます。(もちろんUSB経由でギターを録音することも可能です。)
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短所


好みと言ってしまえばそれまでですが、比較的大人し目な音色であるため、暴れ気味な音色を好む方にはあまりオススメできません。
また、長所でも挙げた音響特性はハイファイな印象を与え、スピーカー自体もモニタースピーカーに近い特性のため、通常のギターアンプ用スピーカーで鳴らした音とはやはり若干違ってきてしまうところがあります。
低音も控えめのため、重低音を求める方にも向きません。
しかし、これらは小さな音量で最大限のパフォーマンスを与えるためでもあるのではないかとも思えます。

あとは、小型アンプなので仕方がないのかもしれませんが、せっかくプリセットが5つも保存できるので、フットスイッチがあったら良いのに…とは思いました。

 

まとめ


THR10が発売されて以降、他メーカーによる真空管モデリング技術もより良くなっていき、様々な製品が誕生し、より良い音色を持ったギターアンプは以前より身近になってきました。
しかしながら、ギターアンプのスピーカーなどの音響的観点から見直し、ギターアンプとしての良さを出来るだけ失わないまま、オーディオ再生機器としての価値まで付加させてしまった例は今のところないように思えます。
ギターアンプとしての性能はもちろんのこと、音楽再生機器として、PC用のオーディオインターフェイス・スピーカーとして幅広く活躍出来るのではないかと思います。
ちなみに「ネタ半分」で購入した筆者でしたが、すっかり気に入ってしまい、今ではほぼ毎日使用しています。

優れた製品であることは間違いありません。是非チェックしてみてください。

以上YAMAHA THR10 レビューのレビューをお届けしました。最後までお読みいただきありがとうございました。


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DTM機材やギターやベース等の楽器等、音楽制作に関わる機材を実際に使用した人が、本音レビューをお送りしています。たまに音楽NEWSなども書いています。
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