さて前回VOCALOIDを上手く聞かせる7つのポイントパート1ではボカロのソフト中心のポイントをお伝えしました。今回は前回に引き続きMIX中心のパート2をお届けします。
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前回は
1.その歌詞は大丈夫?
2.ハーモニーをつけよう
3.僅かなピッチが肝となる!?
をお届けしました。今回は前回に続き
4.ボカロの拘束時間は無限大 その1
5.主役は歌
6.右へ左へ、奥へ手前
7.ボカロの拘束時間は無限大 その2
をお届けします。
VOCALOIDを上手く聞かせる7つのポイントパート2
④ボカロの拘束時間は無限大 その1
さて、これでMIXまでの準備はこれにて万端ですが、ここで私は1回、歌詞は大丈夫か、ラフMIXで良い具合かを振り返ってみます。
歌を自分で録音する場合は、ボカロと同じく拘束時間はほぼ無限大ですが、友人等に歌ってもらう場合はこの限りではありません。
やっぱり修正したい!と思っても、日を改めたりしないと修正が行えません。
その点、ボカロはいつでも修正が可能ですし、喉の疲れも無いので、元気に再び歌って(調整)くれます。ボカロトラックをMIX用にトラックダウンする前に、1度自分が納得の行くトラックなのか、ここで一旦冷静に振り返ってみる事が大事だと思います。
トラックダウンの後、修正したい箇所に気がついて再度修正するより、トラックダウンの前に修正したほうが制作の効率が上がることも、もちろんの理由です。
⑤主役は歌
ここからは、MIXにおけるボカロを上手く聞かせるポイントを紹介します。
MIX前に確認したいポイントとしては、「人間の歌もボカロの歌も同じようにMIXする」事が上げられます。
歌のMIXしたことあるよ!という方、ボカロだけしかした事ないよ!という方も、歌に対するアプローチはある程度同じと考えます。
さて、先ほど②でボカロはパワーが足りないと記載しました。
今回のデモソングでは、初音ミクとグミを使用していますが、両名とも、可愛い・やさしい楽曲には抜群に向いている印象を持っています。
ある程度、パワーを感じさせる楽曲にするには、歌以外のトラックに気をつけなければなりません。
MIXを化粧に置き換えてみます。
私は男性ですが、女性なら化粧となれば気合が入る作業だと思います。
「私は目に特徴があるから、目の周りを強化しよう!」
「鼻には自身がないなぁ。他の場所より目立たせるように」
「この顔だと、頭が目立たない。頭をもっと盛ろう」
……
想像の通り、ケバい具合に仕上がってしまいました…。
MIXの話にもどります。
このように、自分が制作したトラックはどれも良い物です。かっこいいギター、ドラムフィルの手数、クールなベースライン、どれも聞かせたいトラックです。
が、
今回は歌が主役。
歌詞の内容を聞いてもらう人に伝えたい、伝えなければならない気持ちが1番です。
「ボカロを上手く聞かせる」ということは、「他の楽器を多く聞かせてはならない」ということになりますので、時には「歌を邪魔しているパートは極力聞かせない為に『捨てる』」という選択も考慮しなくてはなりません。
⑥右へ左へ、奥へ手前
この項は、テクニック的な解説となります。
まず用意した4本のトラックですが、
A→メイントラック
A’→ピッチを揺らしたトラック
B→グミのトラック
C→ハモトラック
と設定します。
色々MIXの手法はありますが、今回はデモソングで実施したMIXを記載していきます。
まず、A’のトラックに、軽くリバーブを掛けます。Aトラックがメインとなるので、A’トラックには少し奥に引っ込んでもらい、メインボーカルの重厚感を出します。
その次にAとA’のトラックをグループ化します。A’のボリュームは、Aより落とし、あくまでAが目立つようにバランスを整えます。
グループ化する目的としては、後にダイナミクスを整えるコンプレッサーやEQ等で一体感を出すためです。
トラックは2つですが、あくまで初音ミク1人が歌っているように調整します。
「2トラックあるから、2名じゃん」と思わないように。聞いた方は1名だと疑いません(笑)
次にBトラックは、グループしたAを食わないように調整します。
このトラックを加えて、合計1名で聞かせるようには考えません。キャラが違うから(笑)
主役は初音ミク、それを支えるグミ。こういうイメージで制作しています。
しかし、同じパート、メロディーでも、グミがいるのといないのとでは、歌に厚みが変わってきます。初音ミクの歌い方、グミの歌い方は異なるので、良い具合にコーラス効果が生まれるのです。
最後にハーモニートラックを追加します。
Cトラックはコピペしてパンを左右に振ります。コーラスまで真ん中に置くと、真ん中に歌の塊ができて直線的なMIXになってしまいます。デモソングでは、左右いっぱいな楽曲を目指しているので、コーラスは左右に振る選択を行いました。
右のトラックだけ、少し再生スタートをずらしてやると(本当にほんの少し。50msぐらい?)コーラスでも微妙に厚みができて、楽曲全体が豪華になった感じがします。
最後に4つのトラックを更にグループ化し、全体にコンプを薄く掛けたりします。これも「歌」という楽器に一体感を持たせる為に行っています。
その上で、再度各トラックのボリューム調整等を行います。
聞こえにくい部分は、オートメーションを使用して、聞こえにくい部分のボリュームを一時的に上げたり下げたりします。サビの部分ではまとめで上げる等、歌に関してはボリュームフェーダーが一定であることはまずありません。
この部分を地道に調整することで、「MIXとしての聞こえやすさ」を加えていきます。
!!音量が上がっておりますので、視聴にご注意ください!!
大切なものフォークとナイフだーよ
美味しいよね、お肉最高だよね
MIX完成
今回、ボカロトラックを重ねる事を重点に置いたポイント説明だったかと思います。
ということで、同じMIXで、1トラックのみボカロのMIXも制作しました。上記完成のトラックと聴き比べてみてください。
重厚感、最初の聞こえ方としては、やはりボカロを重ねたトラック(case05)の方が良いと私は思います。
⑦ボカロの拘束時間は無限大 その2
ある程度MIXが完了し、トラックダウンに取り掛かる前に、もう1度振り返ってみる事をします。
トラックダウン前なので、ほとんど大丈夫とは思いますが、冷静に完成したトラックを聞いてみます。
出来れば、歌詞を印刷して聞こえにくい部分にチェックを行うと楽曲の精度があがります。
また、友人・家族等に聞いてもらい、どんな内容の歌なのかチェックしてもらいます。流石に、全部の歌詞を理解しろというのは無理ですが、この楽曲を聞いてどんな情景が浮かんできたか、そしてそれが作曲者の意図と大きくずれていないかを文字通り客観的に確認します。
残念ながら、聞いてもらって見当違いの情景が浮かんでしまったら、歌詞が聞こえにくかった可能性があります。このままトラックダウンしたとしても、楽曲の伝えたいことが伝わらない可能性もあります。
そして、この場合、MIXに問題があるのか、歌詞の内容・ボカロの歌い方に問題があるのかを考えなくてはなりません。
そして、④で書いた通り、歌がボカロであるのであれば、分析した修正をすぐに対応することができます。
「戻るのが面倒くさい!!」と思える事は実は良いことです。
歌が人間であれば、すぐに取り掛かることができません。もしかして1週間後かも…?
そうなると、折角新鮮な修正内容も、時間が経つに連れて「まぁ、いっか」となってしまうかも。
こうなってしまっては楽曲は終わりです。
ボカロだからできる事。それを活かして、時には打ち込みの段階まで戻り修正することが、上手く聞かせるポイントであると思います。
心電図の用に書かれているのが、ボリュームのオートメーション。コンプも便利な Fx だが、
このような地道な作業(情熱)も曲の完成には必要な事。
まとめ
ボカロはボカロ本体の調整もさることながら、MIXにも気を使わなければならない楽器です。
ニコニコ動画をきっかけに、いろいろなジャンルのボカロ楽曲が生まれていますが、今回は、「人っぽさ」に焦点を合わせた紹介になったと思います。
中には、ボカロの特徴を前提に楽曲の雰囲気、使用する楽器、アレンジを決めてしまうこともあります。
この紹介記事の中でも、何度か記載してありますが、制作する楽曲は、どのようなコンセプトなのか、はっきりとさせておくことが、上達の近道だと思います。
特に、ボカロ楽曲に関して言えば、ボカロを使用すれば、当然歌唱者は同じなので、楽曲のコンセプト、バックボーンが感じられるような歌詞のにしないと、なかなか耳に止まり難くなります。
ボカロは、今まで「DTMは難しそうと」、手が出せなかった人にもきっかけを与えた有名なソフト、技術だと思います。
難しそうなイメージを感じさせないインターフェース等、とっつきやすさがあります。
だからこそ、人と差をつけるため、地道な調整が必要と思い、重複となりますが、それがうまく聞かせるという根本なのではないかと思います。
以上、お読みいただきありがとうございました。
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CubaseCreate
Twitter@CubaseCreate
アミューズメント関係のサウンドを制作しています。Cubaseを用いて、作曲や効果音の制作を行っています。家ではバンドや結婚式用の楽曲や映像制作を行っています。楽器はキーボードを担当です。
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