マイクプリTASCAM TA-1VPのレビュー

マイクプリTASCAM TA-1VPのレビュー

TASCAM TA-1VPはピッチ補正機能が付いたマイクプリアンプ、ボーカルプロセッサとして2011年2月に発売されました。



ピッチ補正機能に採用されているのはANTARES Auto-Tune Evo。
これのハードウェア版がTA-1VPに搭載されています。

ANTARES社ではピッチ補正等の機能を搭載したモデルとして1998年にATR-1、
2003年にはマイクモデリング機能が追加されたAVP-1が発売されていました。

マイクモデリングでは過去にANTARES AMM-1が発売されていました。

現在でもANTARES社ではソフトウェア版のピッチ補正、
マイクモデリングが継続して開発、発売されており、
そのハードウェア版を搭載したのがTASCAM TA-1VPです。

※TA-1VPに搭載されているAuto-Tune Evoは発売時期の違いから
現在発売されているANTARES社 Auto-Tuneと世代が異なります。

 

>> 購入理由 <<


オーディオインターフェイスとしてスタインバーグUR28Mを使用していますが、
同じ価格帯のマイクプリアンプとインターフェイス内蔵のプリアンプでは
どのくらい異なるのか興味がありTASCAM TA-1VPを購入しました。

TA1vp02

>> 機材の説明 <<


TASCAM TA-1VPの基本機能はピッチ補正、マイクモデリングの他に
ハイパスフィルター、コンプレッサー、ゲート、ディエッサー、
イコライザーを搭載したマイクプリアンプです。

内部処理では、
インプットゲイン→マイクモデラー(EQ)→
→コンプレッサー/ゲート→ディエッサー→オートチューン

このように配列されており、ダブルトラック機能も搭載されているので
一度歌えば僅かにピッチをズラした信号も出力され、
ボーカルに厚みを持たせることが可能です。

仕様としては、
周波数特性 20Hz〜20kHz、±0.5dB(MIC IN→LINE OUT、JEITA)
S/N比 98dB以上(MIC IN→LINE OUT、JEITA)
歪率 0.008%以下(MIC IN→LINE OUT、JEITA)
ダイナミックレンジ 100dB以上(JEITA)

※製品発売1ヶ月前に出された仕様書には
ダイナミックレンジ120dB以上と記載がありました。

プリセットもボーカルプリセット17、ドラムプリセット4、
ベースプリセット3、インスツルメンツプリセット5、
スペシャルエフェクトプリセット2、
ユーティリティプリセット4と豊富に用意されており、
ボーカル以外にもプロセッサ部分を活用できます。

TA1vp03

マイクモデリングに対応したマイクを列挙すると、
Shure SM58、Shure SM57、Shure Beta 58a、Shure KSM 32、
Audio Technica 3035、Audio Technica ATM31、
Audio Technica ATM41a、Audio Technica 4050、
Rode NT1、Rode NT2、Rode NT3、CAD M177、CAD E200、CAD E350

これらのマイクを下記の音質にモデリングすることができます。

Hand-held Dynamic、Studio Dynamic、Small Diaphragm Condenser #1、
Small Diaphragm Condenser #2、Large Diaphragm Condenser #1、
Large Diaphragm Condenser #2、Large Diaphragm Condenser #3、
Drum Mic – Kick、Drum Mic – Snare、Drum Mic – Cymbal、Telephone

例えば「Shure SM58をコンデンサーマイクの音質に。」

こんなことが可能です。

仮に先に列挙したマイクを所有していなくても、
手持ちのマイクの種類をHand-held Dynamic、Studio Dynamic、
Wireless、Small Diaphragm Condenser、Large Diaphragm Condenserから
選択すれば意図するモデリング結果に近くなります。
ピッチ補正のAuto-Tune部分については、25プリセットが用意されており、
クロマチック、メジャー/マイナースケールから選択し、
補正スピードや補正の強さ、個別のキーに対して補正をするかしないか等の
設定が出来るので、曲のテンポや雰囲気に合わせた設定が可能です。

TA1vp04

>>TASCAM TA-1VPの良いところ、気になるところ <<


TASCAM TA-1VPというとどうしてもピッチ補正や
マイクモデリングといった機能に目が行きがちですが、
マイクプリアンプとして非常に素直な音であり癖がないというか、
TASCAMらしい音という印象をもちました。

デジタルアウトも装備しているのでオーディオインターフェイスに
デジタルインが装備されていればラインアウトケーブルの質に
依存しない録音が可能です。

なお、メーカーサイト及び説明書には標本化については44.1kHz固定と
記載がありますが、量子化についての記載がありませんが、
これは24bit固定となっています。

TA-1VPにはフットスイッチを使用することができます。
試しにポラリティスイッチが付いたBOSS FS-5Uを接続してみましたが、
問題なく使用することができました。

フットスイッチには、
Main Bypass、Increment Preset、Mic Mod ON/OFF、Auto-Tune ON/OFF、
Comp/Gate ON/OFF、De-esser ON/OFF、EQ ON/OFF、Double Track ON/OFFを
割り当てることができます。

ライブなどで使用する際、
必要な部分のみAuto-Tuneでケロケロボイス風にしたり、
サビの部分のみダブルトラックで厚みを持たせる等の使い方が出来そうです。

また、MIDIイン/アウトが装備されており、
TA-1VPで設定できる内容の粗全てに対して任意のMIDIコントロールチェンジを
アサインできるので、MIDIフットコントラー等を活用して曲ごとに設定を
変更することができます。シーケーンサーやDAWの機能を利用しても良いですね。

気になるところは、やはりピッチ補正の自然さでしょうか。
検出精度は高いと思うのですが、補正された音が自然に聞こえるか否かは
補正量や曲の場所にもよりますが、補正量が大きい場合、補正後の音質が
自然であるかと言えば違和感があると書いた方が良いでしょう。

これはCUBASEに搭載されているVariAudioでも同じで、
TA-1VPのAuto-Tune Evoが特段にという訳ではありませんが、
最新のピッチ補正技術を持ったソフトウェアと比較すると
多少なりとも遜色はあるようです。
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TASCAM TA-1VPを使って録音したものです。

Steinberg UR28Mのデジタルインに接続し、
CUBASE付属のプラグイン等で処理しています。

TA-1VP側ではのマイクプリアンプ、コンプレッサー、ディエッサー、
オートチューンを軽く使用しています。

コーラスでは個々のピッチの違いによる揺れが
テンポによって気になるときがあるので軽くかけました。
気になるところというか要望としてなのですが、
せっかくMIDI端子を装備しているので、ソフトウェアで設定を変更でき、
インターフェイスを介してMIDIでTA-1VPに送信できればと思います。

設定項目は多いのですが、本体前面のボタンで設定しなければならないので、
マイクモデルや各エフェクトの詳細設定を行うのに時間が掛かります。

TA1vp05

>> 他の機材との比較 <<


UR28M内蔵プリアンプとの比較で購入したのですが、
若干、TA-1VPの方がボーカルの帯域が太くそして全体的に透明感があった。

そんな印象を持ちました。

若干の為に購入して損したのかと言えばそうではなく、
マイクモデリングはマイクの手持ち本数が少ない時に活用できる機能ですし、
自然な掛かり具合のエフェクトプロセッサは使い勝手が良いです。

 

>> まとめ <<


TA-1VPはピッチ補正やマイクモデリングという「売り」だけではなく、
基本的なプリアンプ部分、エフェクトプロセッサ部分も十分配慮されており、
飛び道具的なものではなかった。

今回はマイクプリTASCAM TA-1VPのレビューをお伝えしました。

>> メーカーサイトのリンク
http://tascam.jp/




MOMODON

MOMODON

高校生の時にバンドでギター担当。
シンセやシーケンサーで曲を作っていたことからDTMに興味を持つようになりました。
社会人になり音楽から遠ざかっていましたが十数年ぶりに再燃。
CUBASEと手持ちの楽器を手に休日の趣味に勤しんでいます。

Harmonic-Sound:http://harmonic-sound.com/
MOMODON

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