Komplete 10 Ultimateのレビューパート2~Battery/Massive編~

 

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Native Instrumentsのトータル音源,KOMPELETEレビュー、第1回目に引き続き、第2回目となる今回は、Battery、Massive、FM8をご紹介していきたいと思います。

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Komplete 10 Ultimateのレビューパート2~Battery/Massive編~

第1回目http://dtmreview.com/komplete10-1-4819.html

 

■MPC感覚であらゆるサウンドを手軽にチャージ! 指先ひとつで叩き出せるドラムサンプラー、Battery


battery

Kontakt同様、こちらも個人的にNIの顔だと思っているドラムサンプラー、Batteryです。AKAIのドラムサンプラー、MPCシリーズのようなルック&フィールのシンセで、セルと呼ばれる枠に対してWAVやAIFF等の波形ファイルを突っ込んでやると即座にアサインされ、MIDIパッドコントローラやMIDIキーボード等で演奏可能になります!

セルの数は簡単に増減できますので、お気に入りのMIDIパッドコントローラのパッドとレイアウトを一致させたり、88鍵盤全てで異なった波形を演奏させる、といったことも簡単にできます。またセル単位で個別にボリュームやパン、ピッチ、AHDSRエンベロープ、パラアウトの出力先といった、ドラムサンプラーとして基本的な設定ができるだけではなく、ベロシティレイヤー、ルーピング、LFO、フィルター、エフェクトなどもセルごとに個別に設定できます。そのため1音1音、かなり凝った音作りができます。DAWにもこういったドラムサンプラーが付属するものありますが、Batteryはそれらに比べて圧倒的に高機能です。

ダンスミュージック等でTR-808やTR-909などのエレクトリックドラムマシンや、レコードから切り出したワンショットをリズム楽器として演奏したい時は、間違いなくBattery一択でしょう。あくまで1つの音程に1つのサウンドの再生と割り切って使うとこれほど便利な物もないです。効果音のポン出しに使っても面白いです。サンプラーなので音程を付けて演奏させるような設定もできますが、餅は餅屋的な意味で、それはKontaktに任せた方が良いかな?と思います。

生ドラム主体の楽曲の場合は、NI製のAbbey Roadシリーズなど、優秀な生ドラム音源が多数存在していますので、こういったドラムサンプラーはあまり活躍できないこともありますが、気合いさえあれば生ドラムセットを1音ずつ自分で録音して、Battery上に放り込み、セルごとに細かく設定することでオリジナルの生ドラム音源を作るだって可能です!

実際にそのようにして作られたShino Drumsという優秀なフリーのライブラリが存在します。素直な出音なので、コンプレッサーなどのエフェクトで加工することで様々な表情も作りだせます。Shino DrumsにはKontakt用、Battery用が存在しますが、個人的にはドラムはBatteryで!と思っているので、ここはBattery版をオススメしたいです。

Shino Drums
http://shinoatarubasho.wix.com/shinodrums

Kontakt同様に、Batteryにも4GB近くのライブラリが付属します。生音系からエレクトリックドラムマシン、FM7(後述)で作られたFMサウンドのドラム、果ては特殊なSEっぽいサウンドまで面白い音が沢山入っています。これらをそのまま鳴らすのも、自分なりに改造、音をチョイ足しするのも良いでしょう。この辺はドラムサンプラーならではの自由度と言えますね!

 

 

■攻撃的でマッチョなサウンドなら任せろ! シンセ界のタフガイ野郎、Massive


massive

Kontakt、Batteryに続く、新しいNIの顔、それがこのMassiveという3オシレータのバーチャルアナログ(以下VA)&セミモジュラーシンセです。サウンドは極めて現代的で、ウォームというよりはクールでソリッド、それでいて高域から低域まで万遍なく出せるため、クリアで煌びやかな音から、攻撃的な歪んだ太い音まで自由に作れます。

オシレータ波形は一般的なノコギリ波(Saw)、三角波(Triangle)、矩形波(Square)、サイン波、パルス波、ノイズ等のアナログ的な物以外に、Massive独自のウェーブテーブル波形であるScreamer(その名の通り叫び声のような激しい音のオシレータです)をはじめとしたかなり独特なものが多数あります。これらを3つ組み合わせてミックスし、フィルターやエンベロープで加工し、エフェクトをかけることで1つのサウンドとして完成します。ここまでは一般的なVAシンセと近いです。更に一般的なVAシンセでは、この後にLFOやアルペジエーターやなどで音色やフレーズに変化や動きをつけることが出来ますが、ここから先がデジタル時代のセミモジュラーシンセであるMassiveの大きな特徴にもなっています。

セミモジュラーシンセとは基本的に1台で音作りから演奏までが完結する一般的なシンセシステムに、機能が固定されたツマミやスライダーなどのスイッチ以外とは別に、パッチケーブルを差し込む端子が用意されていて、その端子にケーブルを差し込んで機能同士をルーティング(これをパッチングと呼びます)してやることで自由度の高い音作りが出来るシンセを指します。解り易いところでいうとソフトウェア化もされているハードウェアアナログシンセ、KORG MS-20などでしょうか。

対してモジュラーシンセというものがあり、こちらはオシレータやADSRエンベロープジェネレータ、フィルター、LFO、アルペジエーターなど、普通のシンセシステムであれば1台にまとまっている機能が、物理的に個別のユニットに分かれていて、それらを柔軟にパッチング可能な大規模なシンセシステムを指します。それ故にシンセに精通した人でないと扱いが困難であり、シンセマニア向けの機材と言えます。ハードウェアのアナログモジュラーシンセとしては、YMOのサウンドデザイナーの松武さんが所有されているMoog III-C(通称タンス、見た目がタンスのように巨大だからですw)などが有名ですね。

セミモジュラーシンセはモジュラーシンセに比べると機能が限定されているため、幾分は扱いも簡単です。ソフトシンセであるMassiveには、MS-20のように物理的にケーブルを差し込んでパッチングする機能そのものは存在しませんが、ほぼ全てのパラメータに対して、後述の画面右下のLFOや、8つのマクロを複合的にアサインしてルーティングを組み、自由かつ複雑な音色コントロールをする機能が存在します。パッチケーブルそのものは目に見えなくても自由なパッチングができる、これがMassiveがセミモジュラーシンセと呼ばれる由来です。

ここまででもMassiveの音作りの自由度が相当高く、高度なことが実現可能と言うのは十分に伝わるかと思うのですが、特に強力なのが画面右下のエリアに集約されているコントローラ部分です。ここにはフレーズジェネレータと言っても過言ではない自由度の高いアルペジエーターや、エンベロープやパターンをベジエ曲線で作り、LFOをステップシーケンサーのようにコントロール出来るPerformer機能、MIDIコントロールチェンジと連動させることで、パッチングされたMassiveのパラメータをリアルタイムコントロールできる8つのマクロ機能などが集約されています。

例えばアルペジエーターであれば、普通はオクターブで上下移動やランダム移動で程度で留まるところが、Massiveの場合は鍵盤で白玉一つ弾くだけでメロディやリフのようなフレーズを生成させたりといったこともできます。特にプリセットの「Butterfly Stance」というパッチ。詳細は伏せますが、このサウンドをどこかで耳にしたことがある方もおられるかと思います。私もこの音色を聴いたときは思わず「あ!あの曲だ!」と興奮してしまい、思わずデモを作って遊んでしまった記憶がありますw

なんとなくあの曲っぽい匂いのするデモ音源
https://soundcloud.com/dee909/flyaway

そして、Massive独特のPerformer機能と切っても切れない物として、ダブステップというダンスミュージックのジャンルが存在しますが、このジャンルの楽曲の特徴であるWobble Bass(ワブルベース・ウォブルベース)というサウンドは、誰でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? ワブルベースを言葉で例えるなら、ウォンウォンブワワワワ…といった音です。ディストーションギターのような激しく歪んだ音に、フィルターやエンベロープが複雑に周期変化する、独特なうねりのある攻撃的なベースサウンドです。

ダブステップのみに限らずワブルベースサウンドは、特徴的で目新しいサウンドが人気を博し、昨今の多くのダンスミュージックやポップスでも当たり前の使われるようになりました。そのワブルベースの人気に火をつけたのが、このMassiveだと言っても過言ではないでしょう。実際、ワブルベースのためにMassiveを購入された方も多いかと思われます。

Massiveならば画面右下のPerformer機能でLFOカーブを設定してステップパターン化してやることで、このワブルベースサウンドの独特な音の動きも簡単に作り出せます。ここで敢えてPerformerを使わず、マクロとLFOをパッチングし、速度や深さをリアルタイムコントロールして、生き物のように変化するワブルベースをMIDIコントローラで生演奏、というのも面白いかもしれません。

今でこそ、このPerformerの類似機能は他社のシンセにも内蔵されていたり、独立したプラグインエフェクトでも存在していますが、オリジンとなったのはMassiveではないかと思っています。ワブルベースは、Massiveの独特な機能をエキセントリックに活かしたクリエイティブな賜物だと思います。無限の可能性のあるMassiveで世界唯一のサウンドを作り出してみようではありませんか!

以上、第2回目のレポート【Komplete 10 Ultimateのレビューパート2~Battery/Massive編~】でした。第3回目はFM8、Absynth、Reaktorについてのレビューです。どうぞお楽しみに!

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Dee!

Dee!

俺++(Includeore)やAVSSで作編曲、PCVJ/PCDJ。
クラブ系、歌物、ボカロ、同人なんでも。本業はWeb系。
元Rock oN Company/MI所属。

Web : http://includeore.com
Twitter : https://twitter.com/Includeore
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