ストリングスソフト音源:8Dio Adagiettoについてのレビュー

adagietto0

ハイクオリティなKontakt用音源を多数リリースしている8Dio Productionsから、映画音楽やイージーリスニング向けの、雄大なストリングスに特化したソフト音源「Adagietto」をレビューします。
スポンサーリンク

購入理由

もともとアコースティックなインストや歌モノが好きで、作曲も生楽器中心で行っていました。DTMを久しぶりに再開し、日頃から生っぽい音源の情報をネットで集めていたのですが、8Dioシリーズの生々しさには、早い頃から衝撃を受け、注目していました。

8Dioシリーズのストリングス音源は複数のシリーズが在り、Adagioシリーズが今のところ最高峰クラスになるのですが、Adagioシリーズをすべて揃えると、10万円を越えてしまい、あまりに高価すぎて手が出せない(笑)。そこで、Adagioのコアライブラリにあたる、Adagiettoに注目しました。ただ、3-4万円で良いストリングス音源となると、いろいろ他にも選択肢があり、例えばCinematic Strings2はAdagiettoと音質、収録奏法等、かなり似ています。大いに悩んだ末に、当初からの憧れと、たまたまちょうどセール時のこともあって、8DioのAdagiettoを購入しました。

 

Adagiettoを使用する前に

Adagiettoを使用するには、Native Instruments社のサンプラー「Kontakt(バージョン4.2以降)」のフルバージョンが必要です。

また、音源全体の容量も約13GBと結構重いので、それなりのPCスペックが求められます。参考に、以下が公式サイトのスペック要件です。

  • Full Retail version of Kontakt 4.2 or later required
  • 13GB harddrive space
  • Ability to download
  • PC 2.4GZ+, 4GB ram
  • MAC 2.6Ghz, 4GB ram

 

Adagiettoの立ち位置

8Dioのストリングス音源におけるAdagiettoの立ち位置について説明します。8Dioには、Adagiettoの他に、Adagio、Agitatoというストリングス音源があります(現代音楽向けの特殊奏法満載のCageシリーズはとりあえず置いといて)。
3つの音源の関係性を、公式サイトからざっくり要約すると、

  • Adagietto:8Dioストリングス音源ファミリーのコアライブラリ。ストリングスアンサンブルを用いた素早い作曲に向いている!
  • Adagio:超リアルなオーケストレーションができる。
  • Agitato:Adagioよりもさらにマニアックな奏法が収録されている。

以上となっており、要は、3つ全部揃えれば、リアルなストリグスならなんでも任せたまえ!ということらしいです(笑)

 

8Dio Adagiettoの概要

まず、Adagiettoに収録されているパッチについてです。結構いろいろ入っているので、ざっくりと表にまとめます。

 

【Adagietto収録パッチ一覧】

上位フォルダ 下位フォルダ 収録パッチ 備考
Ensemble※楽器編成

11 Violins,

7 Violas,

6 Cellos,

4 Basses

Longs dynamic bowing1、2 1は優しめのクレッシェンド、デクレッシェンド。2は強め。以下同じ
dynamic bowing sordino1、2 dynamic bowingの弱音器付
sustains サステイン
sustains sordino 弱音器付
tremolo トレモロ
trills maj2 長2度トリル
trills min2 短2度トリル
Shorts Bartok バルトークピッチカート。バチン!!っていう(笑)
Marcato マルカート
Pizzicato ピッチカート
Spiccato スピッカート
Staccato スタッカート
Individual Sections violins, violas, cellos, bassesにそれぞれ分岐 Bartok 同上
Dynamic bowing sordino1
Marcato
Pizzicato
Spiccato
Staccato
Sustains
Sustains Sordino
tremolo
trills maj
trills min
Legatos 無し violins, violas, cellos, basses レガート

この表を一見してお分かりかと思いますが、ソロ楽器のパッチはありません。すべて、アンサンブルパッチです。アンサンブルに限るとはいえども、収録された奏法だけでも充分使えると思います(というかあまり弦楽器の詳しい奏法は知らないのですが(笑))。

次にGUIについて
GUIは3種類しかありません。Longsフォルダ、Shortsフォルダ、Legatosフォルダの各パッチで、それぞれ共通のGUIを使います。また、いじれるパラメーターは少ないので、あれこれ覚える必要もなく、すぐに使えるように配慮されています。

【Longsフォルダ収録パッチのGUI】

adagietto1

GUI左の「DYNAMICS」のツマミは、その名の通りダイナミックスを調整します。これは、CC1にアサインされているので、モジュレーションホイールで操作可能です。弾きながらグリグリして、クレッシェンドとデクレッシェンドを表現します。
右の「MICROPHONES」は、収録マイクの音量調整です。Adagiettoには、「FAR」と「CLOSE」の2つのマイクによる収録音が用意されています。デフォルトでは、「CLOSE」のみオンになっています。各マイクはそれぞれのスライダーで音量調節をします。その右の「VOL」は、2つのマイクをミックスした音のボリューム調整です。

【各マイクをパラアウトできる】
adagietto4

 

なお、各マイクはパラアウトができます。「FAR」、「CLOSE」の表記の下にある部分(図の赤で囲ってあるところ。かなり分かりにくい!)をクリックすることで、KontaktのOUTPUTのどこに出力するかを選べます。

【Shortsフォルダ収録パッチのGUI】

adagietto2

Shortsの中のパッチは、DYNAMICSの代わりに「SPEED」ノブが付きます。簡単に言うと、アタックのスピード調整です。左いっぱいがデフォルトです。右いっぱいにまわすと、アタックが短くなって発音が早くなります。あと、音が堅くなるように聴こえます。左いっぱいで、「ッザン」なのが、右いっぱいで「ザンッ」という感じでしょうか。

【Legatosフォルダ収録パッチのGUI】

adagietto3

上記のパッチと違い、レガート特化型のパッチのみ、GUIの左側にノブが4つ付いています。
「DYNAMICS」は、上述のとおりダイナミクスの調整。「VIBRATO」は、ビブラート量の調整。「SPEED」は、レガートの速さを調整します。つまり、ある一音からある一音に滑らかに到達するまでの時間を調整できます。右いっぱいで最速です。「LEGATO VOL.」は、そのレガート音の音量を調整できます。
この4つのノブを駆使すれば、表情豊かなレガートを表現することが可能となっています。

 

・よいところ

■音が素晴らしい

長々と概要やら外観を説明してきましたが、実際の音はどうかというと、私が聴いた限りでは素晴らしく綺麗でリアルなサウンドです。
Longs系では、軽く弾いただけでも太くて温かい音が立ち上がってきて、気持ちいいです。また、少しザラついている感じが、より生々しさを感じさせてくれます。
スタッカートやマルカートなどのShorts系は、「ザンッ!ザンッ!」と掻きむしる感じが耳に心地よく、弾いていて楽しくなりますね。さらに、かなり速めに同音を連打しても、マシンガンにならずに自然な音を奏でてくれます。マニュアルによれば、Shortsのパッチは大体4~9のラウンドロビンが用意されているようで、この辺りにも8Dioのこだわりを感じますね。
Legato系では、公式サイトの紹介にあるように、複数のタイプのレガートを収録しているようで、とても自然で滑らかなレガートを体感できます。
ともかく、音については、この価格帯では大満足と言ったところです。気になる方は、公式サイトでデモ音源が聴けますので、参考にしてみてください!

■操作が簡単ですぐ使える

これ地味に重要ですね。大体、大容量の音源だと、まずはマニュアルと睨めっこという複雑な仕様が多いと思うのですが、Adagiettoは、音源立ち上げて、即使える。これはありがたいですね。

 

・わるいところ

■動作が重い

重いです。しかもそれだけでなく、独自のクロスフェード技術?のせいか、わかりませんが、CPU負荷もかなりあります。まぁ、この辺りはPCのスペックによるのでしょうが…。私のノートPC2011年製(一応core i7)では、一番メインとなるパッチ、Ensembleフォルダのサステインパッチが重すぎて使い物になっていません。5声部弾いただけで、Voice数が100超えしてるので、PCが悲鳴をあげてパチパチノイズが入ります(泣)これは仕様なのか、改善できる設定があるのか、わかりません…。詳しい方いましたらご教示いただきたいです。ちなみに、サステイン以外はなんとかふつうに動いてるかな?

■キースイッチがない

奏法切り替えが、一つのパッチ内でできません。故に、ガッツリ奏法を使う場合は、各パッチを立ち上げることになり、さらに重くなる…。これは地味に面倒くさく効率悪いので、改善して欲しいところです。

 

・まとめ

音良し、面倒な操作無しのため、サクッと壮大なストリングスを聴かせたい方には最適だと思います。とりわけ、映画音楽やイージーリスニング向けの音かなと思いますので、そちらの方面でストリングス音源を探されている方には、オススメしたいです。
逆にカラッとした、R&Bやポップス系のストリングスには向いてないかも。でも、スケールの大きいバラードなら、結構いけると思います。
ただし、音が素晴らしい反面、それ相応のPCスペックが求められますし、値段も399ドルと、決して安い方ではないので、手放しにオススメできるかと言われると躊躇するところもありますが…(笑)。
最後になりましたが、同一価格で、かつ趣旨も似た音源に、Cinematic Strings2という音源もあります。同じDTMレビューのサイト内に、Gentaro Futatsugiさんの分かりやすいレビューが掲載されていますので、ストリングス音源に悩まれている方は、そちらにも目を通してみてはいかがでしょうか!

以上、Adagiettoのレビューでした。

 

関連サイト

8Dio Productions HP⇒http://8Dio.com/
スポンサーリンク


singood

singood

オリジナル楽曲の制作、公開を行っているユニットです。ボーカル曲を中心に、いろいろ製作しています。
HP:
Twitter https://twitter.com/singood9
Youtube: https://www.youtube.com/channel/UC25Y8XJoYB2juUDJCucBbLQ
singood

Speak Your Mind

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ga('create', 'UA-42816298-1', 'auto'); ga('require', 'displayfeatures'); ga('send', 'pageview');